1. なぜこの連載を書いたのか
AIの普及に伴い、データセンターの電力需要が急増しています。よく見るのは、「世界で何GWが必要になる」「再エネを増やせば解決できる」という方向の議論です。
でも、ちょっと待ってください。
需要があるから供給を増やす、という方向だけで考えると、いくつかの制約が見えなくなります。
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CO₂は? 発電するほど排出が増えますが、残余のCO₂予算には限りがあります。
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排熱は? 電力は最終的にすべて熱になります。
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重要鉱物は? 太陽光や風力を大量に作るには、リチウムやコバルトや銅が必要です。
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送電網は? 発電できても、届けられなければ使えません。
こうした制約を先に並べて、そこから「人類が持続的に使える電力量」を逆算する。それが「電力予算」という考え方です。
ITQ Laboratory では、この考え方を軸に全13回の連載を作りました。
2. 「2,500GW」という数字をどう扱ったか
連載の出発点は、2,500GW超という系統接続待ち規模です。IEA “Electricity 2026” が示した数字です。
ただし、「2,500GWがデータセンター需要になる」と主張したいわけではありません。
これは思考実験上の仮定として使っています。
「もしこの規模の電力利用が常時発生したら、どういうことになるか」を考えるための出発点です。
2,500GWを常時電力として換算すると、年間21,900TWh/年になります。これは2024年の世界発電量(約30,937TWh)の**約71%**に相当します。
この規模を基準にして、排熱・CO₂・鉱物・系統の制約を順に見ていきました。
3. 数値化して見えたこと
連載の後半(第9〜12回)で、具体的な数値を確認しました。
排熱
2,500GWを常時消費すると、需要側で約2.5TWの排熱が常時発生します。これはエネルギー保存則から来る必然で、発電方式に関わらず変わりません。
LCA CO₂e:同じ電力量でも発電方式で最大約75倍の差
21,900TWh/年を石炭火力だけで賄うと、年間約17.97GtCO₂e。
陸上風力だけで賄うと、年間約0.24GtCO₂e。
同じ電力量でも、発電方式によって最大約75倍の差が出ます(IPCC 2014係数・代表値)。
電源ミックスで見ても約8倍の差
現実には単一電源ではなく、複数の電源を組み合わせます。4つのシナリオを比較すると、化石燃料中心のシナリオAと低炭素中心のシナリオCでは、年間LCA CO₂e排出量に約8倍の差が生じました。
CO₂予算照合:消費年数に約8倍の差
電源ミックス別の年間排出量を、IPCC AR6が示す残余炭素予算の目安(500GtCO₂)と照合しました。
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シナリオA(化石燃料中心):500Gt相当を約33.8年で消費する規模
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シナリオC(低炭素中心):約268.8年
消費ペースに約8倍の差が出ました。
4. 全13回の読み方
連載は3つの段階で構成しています。
第1〜3回:枠組みを理解する
電力予算という考え方と、思考実験の基準値(21,900TWh/年)を確認します。
第4〜7回:制約を見る
CO₂・重要鉱物・送電網・蓄電の制約を一つずつ整理します。第7回で制約をまとめた電力予算モデルを提示します。
第8〜13回:数値で確認する
試算の設計から始めて、排熱・LCA CO₂e・CO₂予算照合の順に数値を確認します。第13回で全体を総括します。
どの回から読んでも成立するように各回を設計しましたが、最初から読むと「なぜこの数値を比較しているのか」がより明確になります。
詳細はITQ Laboratoryで公開しています。
→ 人類はどれだけの電力を持続的に使えるのか — 全13回 連載目次
注意事項:本連載は制約構造を把握するための思考実験です。各数値は代表値・参考値に基づく一次試算であり、政策判断・投資判断に直接用いるものではありません。
ITクオリティ株式会社 / ITQ Laboratory