便利だけど、どこかしっくり来ない。私が生成AIとの対話で体験したモヤモヤと、その中から見つけたコツを物語風にまとめました。
1. はじめに──便利だけどモヤモヤする生成AIとの対話
「生成AIって便利だな」と思いつつ、どこかしっくり来ない——そんな経験、ありませんか?
私も同じでした。本質に関する議論をしているつもりなのに、AIは「では次に○○できますが、どうしましょうか?」と、いつの間にか**“実行ステップの提案”**に移ってしまうのです。
こちらはまだ**“問いを掘り下げている最中”**だと思っているのに、AIは「結論が出た」と判断してしまう。
本来なら「これで次のステップに行きますか?それとももう少し違う角度から深掘りしますか?」と聞いてほしいところ。ところが、その選択肢が出てこない——そこに強い違和感を覚えました。
それは、地図を見ながら旅の計画を楽しみたいのに、いきなり「最短ルートはこれです」と道案内されてしまうような感覚。便利だけど、探究の余白が消えてしまうのです。
2. 本質に迫るために試行したプロンプトの工夫
違和感の原因を確かめるため、私は意識的に質問の仕方を変えてみました。
私(初回):「このテーマについて、もっと本質的に考えたいです。概念レベルで掘り下げてください。」
AI(初回):「では、まず実行可能なステップとして……」
やはり具体的な提案が返ってきます。そこで次のように条件を追加しました。
私(2回目):「実行可能な方法ではなく、背景にある価値観や前提を明らかにしてほしいです。」
AI(2回目):「了解しました。では、この問題の原則と前提条件を整理してみます……」
応答の性質が変わりました。さらに検証のため「抽象化・一般化」の指示を加えてみます。
私(3回目):「良いですね。では、それを一般化したモデルにするとどうなりますか?」
具体策ではなく、構造的・抽象的な説明が返ってきました。
この一連の試行で、私は「AIが結論を決めつけている」のではなく、**“ユーザーの発話をもとにタスク完了→次ステップ”**というパターンに従って動いているだけだと理解しました。
つまり、質問設計を変えることで、応答を“本質モード”に誘導できるのです。
(※AI自体が学習しているわけではありません。確率的に文脈に沿った応答を選んでいるだけです。むしろ私自身が**“本質モード”**に切り替えるためのプロンプトの出し方を学んでいたのだと思います。)
3. テンプレート的なプロンプトの功罪──魔法にも呪縛にもなる
こうした試行の中で、「テンプレート」について考えるようになりました。
ここで言うテンプレートには、文書や議論の型だけでなく、「こういう聞き方をすればこう返ってくる」というテンプレート的なプロンプトも含まれます。
型や定型の聞き方を使えば、安定して抜け漏れのない答えが返ってきます。これは便利で、まるで魔法のような道具です。
記事や資料作りでも同じで、チェックリストや定型構造に沿えば議論は整理され、合理的な結論にたどり着けます。
ただし、未知の領域やまだ言語化されていない価値を探るときには、テンプレートやテンプレ的プロンプトが逆に発想の幅を狭めてしまう——そう気づきました。
そんなある日、AIにこう尋ねてみました。
私:「テンプレートに頼ると、思考が型にはまりすぎて本質を見失いませんか?」
AI:「確かに、テンプレートは抜け漏れ防止や品質の安定には役立ちますが、思索や発想を重視する場面では視野を狭めるリスクがあります。」
テンプレは便利。ただし、本質を探る場面では発想を縛ることもある。
私は「発散フェーズでは使わない/整理フェーズでだけレンズとして使う」という方針にたどり着きました。驚きや発見を残しつつ、後から俯瞰することができるのです。
4. なぜ生成AIは“具体化”に傾くのか──仕組みから読み解く
生成AI(大規模言語モデル)は、その学習方法と評価基準の性質上、**抽象論よりも「実行可能な答え」**に傾くように設計されています。
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学習データの偏り:Webや書籍には How to・手順・FAQ・事例といった「すぐ使える具体策」が多い。
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評価基準の傾き:チューニング時の「良い答え」は「役に立つ=実行可能な提案」で定義されやすい。
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利用者の期待値:多くのユーザーが「抽象的な議論」より「すぐ使える答え」を求める。
この三つが重なり、デフォルトでは**“具体策モード”**になりやすいのです。
だからこそ、こちらから意図的に誘導する必要があります。
5. 本質的な対話を実現するための誘導法
実際の会話から得た**“効くコツ”**は次の5つです。
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質問の冒頭で宣言する:「実行可能な方法ではなく——」
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「なぜ?」「前提は?」を連続で問う(抽象層に潜る)
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再抽象化:「それを一般化すると? 原理だけ抜くと?」
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モード宣言:「ここからは思考実験モードで」
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テンプレを使う/外すを明示(発散は外す、整理で活用)
ポイントは、AIに**“場のルール”を宣言する**ことです。AIは文脈を重視するため、「今回の目的」を明確にすると、膨大な知識の中から適した応答パターンを選びやすくなります。しかも、一つの会話の中で何度でも軌道修正できます。
6. 実際に使えるプロンプト例
本質モードへの切り替え
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「このテーマについて、実行可能な方法ではなく、根本原理/価値観/概念構造に焦点を当てて掘り下げてください」
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「この説明を、より抽象的・本質的なレベルに書き換えてください」
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「この議論の根底にある問いは何でしょうか?」
発想の幅を広げる
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「テンプレートを使わず、自由な発想で答えてください」
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「一般的な回答ではなく、あえて逆説的な視点から考えてください」
比較で理解を深める
同じテーマをテンプレあり/なしで比べるのも有効です。
例:「プレゼン構成を考えて」
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あり版:「PREP法で構成してください」 → 安定・漏れに強い
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なし版:「テンプレに頼らず、最適な独自構成を」 → 予想外の切り口
この比較で、型の力と自由発想の力の両方を使い分けられるようになりました。
7. まとめ──“モード切り替え”と教育への応用
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生成AIは本質的に具体化へ寄る癖がある
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質問設計と再抽象化で、会話を本質側に誘導できる
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テンプレは補助。状況に応じて外す/使うを切り替える
同じモヤモヤを感じているなら、次の対話で**“場のルール宣言”とモード切り替え**を試してみてください。AIが徐々に意図をくみ取り、対話が深まっていく感覚を味わえるはずです。
そして、その過程で「AIが学習している」のではなく、「自分自身がAIとの付き合い方を学んでいる」ことにも気づくでしょう。
さらに振り返ると、この「AIを本質モードに導く」手法は、実は人に教えるときの基本姿勢にもよく似ています。
答えを与えるのではなく、「別の角度から考えてみる?」「もう一歩深掘りする?」という選択肢を示し、自ら考えるプロセスを促す。
この視点を持てば、AIとの対話は単なる道具以上に、思考や教育のトレーニングの場へと変わっていくのです。
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