前回:【人類はどれだけの電力を持続的に使えるのか】第2回:2500GW仮説
— 需要側排熱と発電所側排熱を分けて考える —
第2回では、2,500GW超の系統接続待ち規模を参考に、これを仮に常時需要として置いた場合の年間電力量と需要側排熱を試算した。第3回では、需要側で生じる排熱と、発電所側で生じる排熱を分けて整理し、発電方式によって全体の熱影響がどのように変わるのかを考える。
1.このセクションの問い
2500GWという思考実験で仮定した電力規模を確認した次に問いたいのは、発電方式によって発電所側の排熱がどのように変わるのか、ということである。特に、火力、原子力、再エネの間にどのような違いがあるのかを考える。
2.暫定結論
需要側の排熱は発電方式に依存せず、電力消費のほぼ全てが熱になる。一方、発電所側の排熱は方式ごとに異なり、それが地域の熱影響や制約を左右する。や制約を左右する。
3.需要側と発電所側の排熱
第2回で示した2.5TWの排熱は、思考実験上、この規模の電力が需要側で消費された場合に生じる熱である。電力はIT機器、冷却設備、その他の負荷で仕事をした後、最終的にはほぼすべて熱として放出される。一方、発電所側の排熱は、発電効率や冷却方式に依存する。
それぞれの方式が持つ特徴を理解することで、2500GW規模の電力を仮に供給するとした場合でも、電力予算に与える影響が大きく変わる。
4.発電方式別の排熱の特徴
- 石炭火力・LNG火力
- 熱源の化学エネルギーの一部が電力になり、残りは高温の廃熱として排出される。
- 冷却に水資源を多く使う場合があり、地域の環境制約と結びつく。
- 原子力
- 発電時のCO₂排出は少ないが、熱機関であるため発電所側の排熱は大きい。
- 冷却系の安定性や安全性が重要であり、熱の散逸先や再利用なども検討課題となる。
- 太陽光・風力
- 発電所側の排熱は装置損失や変換ロスに限定され、火力に比べると小さい。
- ただし設備建設や材料調達に関する資源制約が別の形で関係する。
- また、太陽光や風力は土地利用や自然環境、大気・地表面との相互作用といった別種の影響もあるため、排熱の少なさだけで優劣を決めるべきではない。
5.発電効率で発電所側排熱はどの程度変わるか
発電所側排熱の大きさは、発電効率によって決まる。熱機関では、投入した熱エネルギーのうち電力として取り出せる割合が発電効率であり、残りが排熱となる。電気出力を $P_{elec}$、発電効率を $\eta$ とすると、発電所側排熱は次のように概算できる。
$$Q_{plant} = P_{elec} \times \left(\frac{1}{\eta} – 1\right)$$
電気出力を2.5TW(思考実験上の需要側排熱に対応する規模)として置くと、発電効率ごとの発電所側排熱は次のように試算される。
| 発電効率 | 電気出力 | 発電所側排熱の概算 | 需要側排熱との合計 |
| 55% | 2.5TW | 約2.0TW | 約4.5TW |
| 40% | 2.5TW | 約3.75TW | 約6.25TW |
| 33% | 2.5TW | 約5.1TW | 約7.6TW |
同じ2.5TWの電力を需要側で使う場合でも、熱機関で発電すれば発電所側にも排熱が生じる。発電効率が55%であれば発電所側排熱は約2.0TW、40%であれば約3.75TW、33%であれば約5.1TWとなる。つまり、需要側排熱だけでなく、発電方式によって発電所側排熱も大きく変わる。
注:これは概算であり、実際の排熱は発電方式、冷却方式、設備条件、外気温、水利用条件によって変わる。原子力や火力の優劣を断定するものではなく、熱機関としての排熱構造を理解するための一次比較である。2500GWはデータセンター需要そのものではなく、2,500GW超の系統接続待ち規模を参考にした思考実験として扱う。
6.何を比較すべきか
発電方式別比較では、次の評価軸を押さえたい。
- 発電効率と発電所側排熱の規模
- 送電損失や蓄電・調整力の影響
- 発電所の立地と熱の受け皿
- 発電方式ごとの資源・社会制約との関係
7.今後の展開
発電方式別の排熱は、CO₂や重要鉱物と並ぶ電力予算の重要な要素だ。次回は、ライフサイクルCO₂の比較を通じて、電力利用の上限をさらに多角的に検証していく。