古いGPSロガーを触っていて気づいたのは、本当に怖いのは本体故障よりも、データを取り出す手段が失われることだという点でした。測位技術を運用するうえでの、意外に見落とされがちな論点です。
本当に怖いのは、本体故障ではなく「データ取り出し手段の寿命」かもしれない
手元に、GT-730FL-S という古いGPSロガーがあります。
こういう機器を使っていると、つい気にするのは本体の寿命です。
電池は大丈夫か、まだ衛星を捕捉できるか、USB接続は生きているか。
しかし今回、改めて痛感したのは、もっと厄介な問題があるということでした。
それは、データ取り出し手段の寿命です。
このGPSロガーは、長年 Canway というソフトでデータを吸い上げてきました。
ところが、こうした付属ソフトは、時代が進むと配布が怪しくなったり、OSとの相性が悪くなったり、いつの間にか事実上のディスコン状態になっていたりします。
本体がまだ動く。
ログもまだ取れる。
それなのに、中のデータを取り出せない。
これは、古い機器を使い続けるうえで、かなり本質的なリスクです。
今回、GT-730FL-Sについて、Canwayでの動作確認をしつつ、GPSBabel 1.10.0 でもログ吸い出しできるかを試しました。
途中では、ESETの警告が出たり、Virtual COM Portが見えなかったり、古いGPSBabel 1.3.3では skytraq 非対応で失敗したりと、いくつかの山がありました。
それでも最終的には、GPSBabel GUIでCOM3経由の吸い出しに成功しました。
この結果そのものも嬉しいのですが、それ以上に意味があったのは、
Canway一本足打法ではなくなった
ということです。
専用ソフトしか使えない状態から、汎用ツールでも取り出せる状態へ少し移れた。
これは、単に一台のGPSロガーを延命した、という以上の意味があります。
測位技術は「取れること」だけでは終わらない
私は最近、「測位学」という形で、測位技術を俯瞰的に整理することに取り組んでいます。
測位というと、どうしても
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どの衛星を使うか
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どの方式を使うか
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どのくらい精度が出るか
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どんなセンサを組み合わせるか
といった話に意識が向きがちです。
もちろん、それらは重要です。
しかし現実の運用では、それだけでは足りません。
実際には、
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どう記録するのか
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どう取り出すのか
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どう保存するのか
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将来も読める形で残せるのか
まで含めて考えなければ、測位データは資産になりません。
どれだけ高精度な位置情報を取れても、あとで取り出せなければ意味がない。
どれだけよいログが取れても、専用ソフトが消えたら活用できない。
このあたりは、測位技術そのものというより、測位技術の社会実装や運用設計の問題です。
今回のGT-730FL-Sの件は、そのことをとてもよく示しているように思います。
レガシー機器運用の本質は、実はかなり普遍的
この話は、GPSロガーに限りません。
古い計測機器、制御装置、研究設備、監視システム、業務端末。
どれも本体が壊れる前に、周辺ソフトや接続環境の方が先に危うくなることが少なくありません。
つまり、レガシー機器運用の本質は、
「まだ動くか」ではなく、「まだ取り出せるか」
にあるのだと思います。
そして、もう一歩進めると、
「専用環境が消えても、標準的な形式に逃がせるか」
が重要になります。
今回で言えば、Canwayだけに頼るのではなく、GPSBabelで吸い上げ、GPXという比較的標準的な形式で保存できる道が見えてきたことが大きな収穫でした。
技術資産を守るには、出口を複数持つこと
古い機器を使い続けるとき、つい「本体が動くか」に目が行きます。
しかし、本当に守るべきなのは本体そのものではなく、そこに蓄積されたデータや、それを活用する能力なのだと思います。
そのためには、
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専用ソフトだけに依存しない
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汎用ツールでも読めるか確認する
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GPXやCSVなど標準的な形式に逃がす
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手順をメモとして残す
といったことが効いてきます。
今回の小さな検証は、そうしたことを改めて確認する機会になりました。
詳しい技術メモは、ITQ Laboratory に整理してあります。
GT-730FL-S、Canway、GPSBabel、COMポート認識など、実際の手順や躓いた点はこちらにまとめました。
GT-730FL-S GPSロガーをCanway依存から救う — GPSBabel 1.10.0でログ吸い出しに成功
https://lab.itq.co.jp/gt-730fl-s-gpsbabel-canway/