Google VidsでAI動画量産を夢見たが、そう簡単ではなかった話

1.そもそもなぜ動画を作ることにしたのか

ITクオリティ株式会社では、ITQ Techpedia(https://tech.itq.co.jp)というWebサイトを運営している。情報処理技術者試験のシラバスをベースに、コンピュータサイエンスの基礎から応用まで600記事以上を公開している技術解説サイトだ。

ある日、Google Search Consoleを確認していて気づいた。記事の多くが「検出 – インデックス未登録」になっている。インデックス登録が保留されたまま、検索結果に出てこない。

原因を調べたところ、Geminiからこんな説明を受けた。「教科書的なコンテンツは独自性がないとGoogleに判断される場合がある」と。

……そりゃ教科書的にもなるよ、教科書を目指しているんだから。

しかしGoogleの論理はこうらしい。類似のコンテンツがWeb上にすでに大量にあれば、それは独自性のないコンテンツとみなされる。いくら丁寧に書かれていても、構造が教科書的であれば埋もれる。

では独自性を出すにはどうすればいいのか。Geminiが示した選択肢の一つが「動画化」だった。同じ内容でもテキスト記事とは別の形式で表現することで、独自コンテンツとして認められやすくなるという話だった。

ウソかもしれない。しかし、半信半疑のまま「やってみる価値はある」と判断した。

そのタイミングで飛び込んできたのが、Google I/O 2026の発表だった。

2.Google I/O 2026と期待

発表を見て、正直テンションが上がった。

AIが教材動画を自動生成する——そんなデモが画面の中で軽々と実演されていた。Googleが推すAI動画生成ツール、Google Vids。ドキュメントを渡せばAIが構成を考えてナレーションまで仕上げてくれるという。

Search Consoleで詰まっていたところに渡りに船だった。600記事を動画化できれば、独自性の問題も解決するし、学習者への訴求力も上がる。一石二鳥だ。

そして私は、一番詳しいだろうと思いGeminiに相談しながら作業を進めることにした。その顛末を記録しておく。

3.最初の壁:ライセンス

まずVidsを開いた。しかし画面に「Help me create a video」が出てこない。AIの自動生成機能が見当たらない。

Geminiに聞いてわかったのだが、私が契約していたGoogle Workspace Business PlusプランではVidsのAI機能は使えない。Enterprise StandardかAI Expanded Accessという追加オプションが必要だという。

Googleの料金体系は、表面的にはシンプルに見えて、実際に使おうとすると「あの機能は上のプランだけ」「このオプションは別契約」という壁が次々と出てくる。発表のデモでは誰もそんな話はしない。ツールの宣伝は「できること」しか語らない。ここで最初の現実を知った。

プランの選択肢を整理するだけでGeminiとかなりの往復が必要だった。結論としては、まずEnterprise Standardへの移行でAI機能を解放し、月間の生成上限に達したらAI Expanded Accessを1ヶ月だけ追加するという段階的な方針に落ち着いた。

4.本命ルートの挫折:Docs→Vidsは教材に向かない

ライセンスの問題を解決して、いよいよ本丸の作業だ。

VidsでAI自動生成するにはGoogleドキュメントを渡すのが最もスムーズとされている。Geminiの説明でも「@ファイル名で連携すれば自動で構成案を作ってくれる」とのことだった。

実際に試してみた。結果は——残念なものだった。

数式が消えた。コードブロックが崩れた。

ITQ Techpediaのコンテンツは情報処理技術の解説記事だ。基数(進数)の変換アルゴリズムも、ビット演算の説明も、数式やプログラムコードが教材の核心にある。それがすっぽり抜け落ちた動画では、教材としての価値が根本から失われる。

原因はVidsのAIの性質にある。現時点のAIは「テキストの要約」と「ストック素材の割り当て」に特化しており、数式や特殊記法を「視覚的に重要な要素」として認識・維持する能力がまだ発展途上だ。

本命ルートが教材には向かないことが判明した。

5.採用したワークフロー:HTMLを起点にスライドを経由する

Docsからの直接生成を諦め、別のルートを考えた。

ITQ Techpediaのtechシステムは、コンテンツをMarkdownとHTMLの両形式で取得している。このHTMLを起点として、スライドを生成し、それをVidsに読み込ませるという迂回路だ。

HTMLからスライドへの変換はClaude Codeで実施した。構造的なHTMLはスライドのレイアウトに落とし込みやすく、数式やコードブロックの配置も指示できる。ここまでは比較的スムーズだった。

ところが、ここからが本当の手作業の始まりだった。

6.それでも手が抜けない3つの作業

1. スライドの密度と分割

Claude Codeが生成したスライドは、あくまで「素材」だ。フォントサイズが合っていない、1枚に情報を詰め込みすぎている、逆に内容が薄すぎるスライドがある。1枚ずつ目で確認し、フォントサイズの調整、1枚を2枚・3枚に分割する作業を手でおこなった。

AIが生成したものをそのまま使えるほど、教材は甘くない。

2. Vids上でのナレーション要約問題

スライドをVidsに読み込んだ後、AIがナレーションを生成する。しかしスライドに記載したスクリプトがそのまま使われるわけではない。AIが「良かれと思って」要約してしまう。

削られると困る説明がある。省略されては困る手順がある。それを一つひとつ再生しながら確認し、ナレーションの文言を手動で修正していった。

3. 専門用語の発音修正

これが最も地道な作業だった。

AI音声は専門用語の読み方を間違える。「IEEE 754」を奇妙なアクセントで読む。変数名や関数名を一文字ずつ読み上げてしまう。実際に耳で聞きながら、正しく発音されるよう表記を調整したり、読み仮名を仕込んだりする修正を繰り返した。

7.最終的にできたもの

こうして完成した最初の動画がこちらだ。

「情報処理技術の基礎:基数」 https://youtu.be/ZsEdo4HBrzQ

ITQ TechStreamチャンネルの第1本目。基数(2進数・8進数・10進数・16進数)の解説動画で、約6分。数式もコードも崩れることなく、専門用語の発音も確認済みの仕上がりになっている。

今回の動画の元記事はこちらから読める:https://tech.itq.co.jp/1-1-base/

結論:自動化はゴールではなくスタート地点

今回のワークフローを整理するとこうなる:

HTML取得(techシステム)→ Claude Codeでスライド生成 → スライドの手動調整 → Vidsで読み込み → ナレーション文言チェック → 発音修正 → 完成

4ステップに見えて、実際には7工程ある。

ツールの発表では、まるですべてが自動でできるように見える。実際は違う。複数のツールと処理をつなぎ合わせて初めてワークフローが成立し、その各ステップの間に人間の目と判断が必要になる。

それでも、このワークフローを確立したことには価値がある。次の動画は同じ工程を踏むが、テンプレートができているぶん速い。繰り返すたびにチェックポイントが洗練されていく。

そして最初の動機——Search Consoleのペンディング問題——が解決するかどうかは、まだわからない。Googleの言う「独自性」が動画化で認められるかどうか、これから確認していくところだ。

「生成AIで動画が自動でできる」は半分本当で、半分は誇張だ。恩恵を受けるには、まず自分でワークフローを手でつくり、どこに人間が必要かを見極める過程が不可欠だった。

それが、Google Vidsを実際に試してわかったことだ。


ITクオリティ株式会社 市原明彦

8.おまけ

この記事をGoogle DocsにしてVidsで動画を生成しました。

素で作るとこのくらいの出来です。字幕だけは追加しています。

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